春の丘姉は小さな光食べ  渡辺誠一郎

春の丘は確かに、菫や双葉や小川の雫など小さな光に満ちている。
そして、姉ってどこか、美しいながら苦労して痩せているというイメージ。小さな光しか食べていなかったら、それは痩せてしまうだろう、なるほど姉はそれで痩せていたのかと、腑に落ちるところがある。美しく透き通って、ふと振り返ると光の中に消えてしまいそうな、かそけき姉。
『地祇』(銀蛾舎 2014年10月)より。そのほか惹かれた句から10句選。

黒船の去りて久しや金魚玉
薄暑光湯守の椅子の小さくて
引鶴やわが腸がべたべたす
ぼろぼろの水母の鼓動確かめる
漂泊は鶴の骸を見るためか
流行も不易も旅のくさめかな
みちのくの春日の痩せて鹹(しおからき)
死者だけが海辺を歩く春日向
死に神は生き神殺めひやしんす
断崖に立つごと冬の縁側に