無花果に樹液の匂ひ昼深し  藤田かをる

無花果の素朴な甘さは、樹液の甘さだったのか。はっきりそれとはわからない無花果の香をとらえるのに「樹液の匂ひ」とはうまく言ったものだ。無花果の実の根本から垂れる、乳のような白い液を思う。昼が深まるほどに、そのほのかな樹液の匂いも濃くなるだろう。
下五に置かれた「昼深し」という語から、無花果という木の葉陰の暗さも思われるし、秋の午後のほのかな倦怠も感じ取れる。

「舞」2015年1月号より。