赤い靴が春の芝生を走りたる  江渡華子

童話「赤い靴」を思った。

お気に入りの赤い靴を、教会に行くにもどこに行くにも履いていたら、呪いをかけられて、赤い靴を履いた足がひとりでに踊りだす。止まらないから、切断。そしたら、赤い靴を履いた自分の足が遠くへいきました、というお話。つまり、KY撲滅運動童話だ。(ちがう)

小さいとき、この切断された足を想像して、なかなか眠れなかった。

掲句。童話の中ではなんとなく枯野のイメージだったが、ここでは「春の芝生」。それでもやはり、深刻な感じがある。「走りたる」という突き放した措辞が、それを助長させているのだろう。
と、ここまで、童話「赤い靴」に引っ張られすぎる読みをしたが、赤い靴(を履いた人)が芝生を走ることだって、ある。もしかしたら、実際に作者はこの景色を見ていて、童話「赤い靴」を思ったのかもしれない。
現実に空想を入り交じわらせてくれる。不思議な味わいのある句だ。