砂時計返せば風の芒原  神野紗希

「砂時計」の存在を初めて知ったとき、こんなもので時間が計れるのかと驚いた。ここでは、その砂時計をゆっくりとひっくり返しているのだろう。その砂の流れる感じが、芒が風を受けて一方向に流れていくイメージときれいに合ってくる。

ここで「砂時計」だが、これは様々なコードをもつモチーフだ。もはや厄介なものだといっていい。さらに、ここでの「砂時計を返す」という動作は、時間を編み出す、時間を戻す、などのコードをもつ。これらは、神的、支配的な要素が強い。ここでは、そのような重いモチーフに、「返せば」という軽い措辞を続け、イメージの転換を図っている。「芒原」という誰もが頭にもつ景色が、読者を現実世界へ戻してくれる。

力がすっと抜けていくような、不思議な魅力のある句だ。