草刈つていちにちふつか月の畦  綾部仁喜

夏のあいだに伸びた草を刈って、さっぱりとした畦に、夜、月光がさしている。その爽やかさがなんともいえない。「いちにちふつか」で、その風景を昨日も今日も良い気分で眺めている作者の心持ちまで感じられてくる。「月の畦」という表現も省略が効いていて、下五をきっちりおさえている。単に月光がさしているだけでなく、畦がまるで月のものになっているようでもある。

「泉」2015年11月号より。今年1月に亡くなった綾部仁喜追悼号。藤本美和子による200句抄より、10句ほど。

竹伐つて頤細く戻りけり
飛ばしけり七草爪の大なるを
更衣駅白波となりにけり
白玉の器の下が濡れにけり
さしのべし手と綿虫と宙にあり
笹鳴きの顔まで見せてくれにけり
くらやみを年来つつあり峠の木
三月の喉切つて雲軽くせり
一本の芒の水を替へにけり
寒木となりきるひかり枝にあり
綿虫や病むを師系として病めり

切れ字の多いのは、いかにも波郷の弟子。なかでも「けり」の句が目立つ。