鳴かずゐる鳥の嘴雪かむる  小川軽舟

鳴かないで、身じろぎもせず、雪の中で耐えている鳥。ひらかない嘴の上には、すでに、降る雪がうっすらと積もっている。雪にとっては、木や草や鳥や人間の違いなど関係ない、ただその上に降るだけなのだ。

次の瞬間にも、鳥がその嘴をひらき、雪を振るい落として、一声啼いて飛び去るかもしれない。しかし、今はまだ、じっとしている鳥のほとりにたまっているじりじりとした時間が、上五と下五の動詞重ねなどで言葉が詰屈している語感によって、しらべの上にも再現されている。

「鷹」2016年2月号より。