ほほ笑みは眠る合図やヒヤシンス 江渡華子

第二句集『笑ふ』の句集名は、「紫陽花や笑つてほしいから笑ふ」から取られた。この句の場合、微睡むといつもほほ笑む子どもを詠んでいると思うが、きっとそれは、華子さんがほほ笑みかけているからかもしれない。
初めに戻るが、青木ともじ君は、『笑ふ』を評する最後に「わたしから約束をする青葉木菟 江渡華子」を挙げながら、次のように展開している。「この句における約束が何であるかはともかく、この約束が句集を通して、理論とは別の次元で彼女が「詠む対象とどう向き合うか」という作者としての姿勢を宣誓しているように感じるのだ。」(『群青』2016₋4)。
「約束」とは、将来にわたっての取り決めだ。つまり、華子さんとだれかとの、或いはなにかとの関係の起点でもある。誓うことによって、関係が始まる。「合図」も、きっとそう。俳句を詠むことで、いろんなものが呼応し、紡ぎ合うのだ。

(2016-4 菜の花)