蝶を曳く蟻のまつりを見て通る 中原道夫

そうか、いつも蝶の哀れさに気を取られがちだが、蟻にとってはとてもありがたい大物だと気付く。しかし人間の我々にはあまり関係のないもので、作者も見て、止まる事なく通ら過ぎるのだ。「まつり」を平仮名にしたことで、祭りの熱が少し削られ、ままごと感を感じる。

句集『不覺』(平成15年 角川書店)より。