鳶は輪を絞りつ降りぬ磯遊   小川軽舟

「絞りつ」が巧い。鳶が、天心にいるときは、その旋回の輪をひろくゆるやかに大きくとっていたのが、降りてくるにつれて、だんだん、輪のサイズが小さくなってくる。そのことを、「絞る」という動詞で表現したところが、にくい。最後に、「磯遊」が取り合わせられるのも面白い。「鳶は輪を絞りつ降りぬ」というモチーフのみで一句に仕立てることもできるが、そこをあえて「磯遊」と組み合わせることで、「絞る」という単語を斡旋した“どや顔”がうすまって、すまし顔に近くなる。磯遊びのときの、鳶が何かを狙って旋回している様子や、春の空の奥行きまで感じられて、磯遊びの句としても魅力的だ。

「WEP俳句通信」vol.61(ウェップ・2011年4月)、特別作品16句より。

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