木から落ちるしずかにびわ湖に落ちる  阿部完市

句集『にもつは絵馬』(邑書林 1998年)より。

びわ湖はさして静かな湖ではないので、この落ちたものがしずかに落ちるのであれば、その落ちたことに気付いたのは作者だけだろう。いや、もしかして落ちたのは作者なのかもしれない。何が落ちたのか、詳しく描かれていないことによって、その落ちるというマイナスな言葉がより不安感を持たせる。
そもそも、びわ湖は水だから、落ちてくるものをしずかに受け止めることはできるのだろうか。落ちたものは、現実に存在するものなのか、作者だけに見えている「何か」なのか、句から受けた不安は募るばかりである。