景色の中に、雪だるまが崩れている。ああ、これはきっと、雪だるまが動こうとしたから崩れてしまったんだ、と断じる。高柳重信に「冷凍魚/おもはずも跳ね/ひび割れたり」という句があるが、動きたい雪だるまの末路が切ない。もちろん書きぶりは非情なので、ファンシーにおちいらず、格調も保たれている。
第一句集『蜂の巣マシンガン』(ふらんす堂 2011.9)の冒頭に置かれた一句。見えないものを見る力のずば抜けて在るひとだ。タイトルしかり、すでに確固たる個性をそなえた作家である。集中、ほかいくつか。
冬眠のものの夢凝る虚空かな
虹の根に死者の家ある遠野かな
いつも夕焼踏切鳴るを覚ゆるは
紀国の谺うるはし黒揚羽
傘さして舟にありけり秋の暮
不邪淫戒赫々と蟹群るる音
秋繭を煮て百年や釜の映
夜学生故郷印度の笛吹けり
祭あと河童は川を流れけり
御堂筋銀杏地獄銭地獄
雪女自死の少年連れて北へ
水かけて焚火死なざる釜ヶ崎
勇魚討たれて海流に歌託しけり
俺斃れ明けの切株ひこばゆる