献身や秋の蜥蜴に紺の縞  杉山久子

蜥蜴より守宮をよく見かけるが、実はあまりすぐに見分けをつけられない。本当に種類で違うもんなのかと思う。こんなことを言うと本当に好きな人から怒られるかもしれないが、一度、守宮だと思ってさわったら尻尾が切れてとても驚いた気がする。どこで見分けようとしているかと言うと、透明感だろうか。守宮は透明感があり、蜥蜴は暗い色で艶がある気がする。だから、この紺の縞というのが、よくわかる。蜥蜴は深く綺麗な色をしている。
その色を見ていると、なぜか目をそらせなくなり、じっと見入ってしまう。上五が切れているから、献身と蜥蜴に距離があるものの、その美しさにとらわれて献身的になってしまっているような人にも見えてきて、面白い。

詩客 10月14日号『秋夜』より