臍がしばらく背中にいるぞ秋の暮  坪内稔典

「臍から上が上半身で、臍から下は下半身。なら、臍はどっちに入るのか」
という質問は昔からあるものだ。その質問からもわかる通り、臍は体の中心にある。「雷様が臍をとる」とおどされるときに言われるので、よほど体にとって大切なものなのだというイメージがある。へこんでいるものをとるのも不思議なので、雷様はでべそ好きなのか、何をしたいのかよくわからない。

臍を曲げるという慣用句をもじっているのだろう。背中に、それもしばらくいるんだという少し大げさな言葉を、「ぞ」でとめる言い方をすることで、ふてくされている感を増強している。秋の暮という大きな季語を持ってきたことにより、特別感がなくなり、日常のやりとりの様子なのだとわかる。

『俳句』(角川学芸出版 2011年11月号)より。