本を開けると、閉ざされたくらやみのなかにいた文字たちが、光のもとにさらされる。その文字の気持ちになった句だ。「もう朝よ」とさっとカーテンを開けられたとき、入ってきた朝日をまぶしがるように、本の上の文字たちも、突然さした光に、背伸びをしながらまぶしがるのだ。木の芽を取り合わせているのもいい。木の芽を照らし、はぐくむ光が、本に届くと思うと、とても快い。
『俳コレ』(邑書林、2011年12月)より。十二国さんの俳句からは、人間のにおいがあまりしない。たぶん、世界へ強く共感して同化していけば、自分というものは、どんどんなくなっていくだろう。そんな無防備の愛が、読む人を切なくさせる。宮沢賢治や、笹井宏之の読後感を思う。
暖かし耳を模様と想ふとき
ロボットも博士を愛し春の草
たんぽぽに小さき虻ゐる頑張らう
ふぶくたび桜の時間減りにけり
朝の野に壁なすひかりほととぎす