蝶の足四、五本触れて電話切る  野口る理

ひとつのイラストレーションのような、俳句。電話を切ろうとする彼女に、群がってくる蝶たち。蝶ではなく、その足の数を明示したことによって、かすかなる感覚と、蝶のいきもの感が出てくる。「風の谷のナウシカ」のナウシカと、オウムの触覚のようだ。

週刊俳句編『俳コレ』(邑書林・2011年12月)より。野口る理の作品は、「初雪やリボン逃げ出すかたちして」という句に代表されるように、“しゅるしゅる”とリボンが解けていくような、そんな手触りの俳句たち。

しづかなるひとのうばへる歌留多かな
梅園を歩けば女中欲しきかな
せんかうのけむりうらかへり苺へ
虫の音や私も入れて私たち