二十歳つよき凍星のみ愛す  矢口晃

若者の、不遜と矜持と。二十歳の墓標のごとき一句。スピッツの「渚」という曲に「ぼやけた六等星だけど~」というフレーズがあるけれど、その、六等星に目を向けるっていうスタンスもなつかしく感じられるいま、一周まわって、この「つよき凍星のみ愛す」る姿勢の魅力が強まっているように思える。

週刊俳句編『俳コレ』(邑書林・2011年12月)より。現代の境涯派。「鷹」に発表されたときに印象に残っていた句が入っていたりすると、うれしくなる。掲句もそのひとつ。

日曜日いそぎんちやくに蟹が寄る
金魚飢う部屋のどこにも鏡なし
電話鳴りゐたりグツピー死にゐたり
自殺せずポインセチアに水欠かさず
家にゐて家なつかしきパセリかな
三匹の蝶々ひと組はつがひ