寒林の出口は過ぎしかと思ふ  田中裕明

冬の林は、木々も葉を落とし、光をとおしやすい。夏の林を抜けたときの、ぱっとした明るさを感じることはなく、だから、「過ぎしかと思ふ」という漠然とした言い方になるのだ。もうこのあたりは寒林ではないような気がする、と思われる程度の輪郭のあやふやさが、寒林らしさだと納得させられる。

第四句集『先生から手紙』(邑書林、2002年10月)より。