いつ渡そバレンタインのチョコレート  田畑美穂女

バレンタインデーといえば、この句でしょう。そわそわとしている女性のこころが、「いつ渡そ」のひとことで、十分にいいあてられています。
「バレンタインのチョコレート」という季語部分で、十七音中の十二音をゆたかに使うというのも、大胆な方法。つまり「いつ渡そ」という五音に、一句の命運がかけられているわけです。「バレンタインのチョコレート」というフレーズに、五音つけなさいといわれて、これ以上のものは考え付かないだろうと思います。そう思わせるこの句の、言葉同士のジャストミート感におそれいります。
「渡そう」ではなく「渡そ」というところに軽さを感じます。あまり深刻そうでないところも、キャッキャと騒いでいる、女子の様子を思わせて、好きですね。