初蝶のどこをつまめば破れざる  河野けいこ

初蝶の危うさがよく見えてくる。蝶はビロードのような手触りで、ふとした瞬間に破れてしまいそうな不安をもたせる。私は蝶々があまり好きではないので最近は極力近づかないようにしているのだが、小さい頃はその薄くなめらかな手触りに夢中にもなった。どこをつまめば傷つけずにすむのか。やさしいようなやさしくないような。つままなければ破れることもないだろうに。それでもふれたくなるのだ。その危うい薄さの羽に。

 

句集『ランナー』(創風社 2009年)より。