山躑躅燃ゆれど山はひそかなる  水原秋桜子

それは確かに山の一角の出来事なのだろうが、山自体に影響はない。まったく、人間の世界と変わりがないのだろうな…と思う。誰かが死んでも、多少その周りには影響があるだろうが、社会全体には自分が思っているほど影響はでない。けれども、そこから焦点をぐーっとしぼると、確かに躑躅は燃えていて、その周りの木々はハラハラしたりその火の明るさに見とれているのだろう。

句集『新樹』(交蘭社 昭和17年)より。