哀しくはないが空見るときも亀  松井康子

本当に哀しくはないのだろう。哀しさとは違うが、漠然とした違和感はある。かといって、空を見るときに違う生き物になっていたら、そっちの方がこわいことだなと思う。私だって空をみるときですら人間だし、自分がどんな生き物であるかだなんて、普段あまり意識しない。きっと、亀だってそんなこと考えないだろう。けれども、ふと自分は亀なんだな。なんて意識するのは、きっと春のぼんやりとした空を見ているときなのだろうなぁと思う。
週刊俳句255号『春よ』より