涼しさのこの木まだまだ大きくなる  神野紗希

 樹木の生命力をまっすぐに詠いあげた高らかな讃歌。「まだまだ大きくなる」は樹木の様態からの客観的な判断であるが、その後ろには、「まだまだ大きくなれ」という作者の期待の気持ちもこもっているようだ。

「涼しさの」という出だしには文語調の抑えた語感がある。そこから一転して口語表現と字余りとで畳みかけるように言葉が継がれている。こういう自由で溌剌とした言葉の使い方は、作者の大きな魅力である。