芦原に金色の鯉つき当たる  神野紗希

青々と茂った芦原に、一匹の金色の鯉が辿り着いた。青と金との対照が映像的に美しいが、それよりもこの句で注目すべきは「つき当たる」という下五である。この言葉には妙な手応えがあり、単に鯉が芦原に辿り着いたというよりは、文字通り両者が強くぶつかったという感じがある。ゴツンという音でも聞こえてきそうだ。映像的な美しさのなかに裁ち入れられた「つき当たる」の違和感。これによってこの句には単なる見た目の美しさには集約できないある特異さが生まれた。現実の光景というよりは、抽象化された夢の中のイメージのような不思議な味わいのある一句。