うすうすと伸びて木の根になめくぢり  岩田由美

木の根に、うっすらと膜のようなものが伸びている、よく見たらなめくじだった。木の根になめくじがいるというシチュエーションが魅力的だ。風呂場や家の周囲ではなく、木の根に置くことで、なめくじが、自然の中のひとつの構成物、汚いものではないただ生きているものに見えるところがいい。「うすうすと伸びて」も、木の根の色がなめくじのからだに透けているところを見せてくれる。

「俳句」(角川学芸出版)2012年8月号、作品12句「水鏡」より。