蠅叩き一本持ちてをとこたり  布施良

普段、虫の出ない家なのだろう。飛ぶ蠅に我慢できなかったのが誰かはわからないが、ようやく家の大黒柱が立ち上がった。手に一本蠅叩きを持って目を光らせている姿を想像すると、頼もしいよりも少し滑稽に思える。「たり」でもうすでに蠅退治は済んだのかな・・・と思うが、焦点がぼやけてしまっている気もするので、その姿に集中させるなら「たり」でなくてもよかったかもしれない。

『門』2012年9月号より