横顔は子規に如くなしラフランス  広渡敬雄

子規といえば横顔。同世代の松山の友人に俳句をしていることを告げると「ああ、子規でしょ!横顔の!」と言われるほどだ。「如くなし」の措辞が子規への敬意をユーモラスにあらわしている。ラフランスのごつごつとした不思議な形も、子規の横顔のちょっと不恰好な輪郭を思わせて楽しい句だ。

角川学芸出版「俳句」2012年11月号「角川俳句賞」受賞作「間取図」より。

うまい作家だが「詠み方のパターン」が気になるという正木氏の指摘もあり、「今まである句のなぞりみたいなところで止まっていない」という池田氏の指摘もあり。うまさの上に成立する独自性をどのように評価するのかは、本当に言語化できない微妙な部分。言語化できない、すなわち数値化できないからこそ、良し悪しを見分ける眼力を備えた選考委員が必要なのであり、「私はこう思う」「こう思わない」ということがすなわち答えになるので十分だろう。
角川俳句賞の評価は、絶対的(一定レベルを上回る作品でなければ、もちろん受賞者なしがありうる)でありながら、相対的(同じときにどんな作品が出てきたのかに左右される)でもある。◎はないが○が三つ集まった「間取図」に今回の受賞が決まったのは、「間取図」がそれだけ完成度の高い句群だったということでもあり、相対的にこの「間取図」の巧さをブレイクスルーするものがなかったということでもあり。
やはり安定感は抜群、納得。しかし安心して読めるだけにワンダーの部分を求めたくなるというのは、私の欲望。

50句の中で惹かれた句を以下に。

靄生みて靄を走れり雪解川
おがくづの山の湿りや春の蟬
土星に輪ストッキングの掛けられて
神棚の幣に微風や寒造

特に、土星の句の不思議さが好きだ。土星とストッキングの出会いに目がチカチカする。