湯豆腐の大中小のかけらかな  喜多昭夫

もっぱら寒くなってきて、土鍋が活躍している。湯豆腐もよくやるのだが、その他の鍋でも、豆腐は欠かせない。きっと作者の湯豆腐は絹ごしなのだろう。絹ごしの豆腐をそっと掬う。その柔らかさにはらはらしながらも、つるんとしたのど越しが最高だ。我が家も豆腐は私の好みでもっぱら絹ごしだ。そっと掬ったはずなのに、濁った湯の中に結構かけらが落ちている。どうしたものかと思いつつ、おじやにしてしまい、一緒に食べる。大中小のかけらも本体も、すべておいしく食べることができて、鍋は本当に幸せになる一品だ。

句集『花谺』(2012年11月)より。