血を抜かれる今日が寒い 矢野錆助

献血をすると風邪をひきやすいというのは本当だろうか。「いつもより寒く感じるんだよね」と献血から帰ってきた人は言う。私は万年貧血なので、献血できないからその感覚は分からないけど、血が足りないなとか、貧血で気持ち悪いなって思うときは確かに寒い気がする。倒れる瞬間に血が頭から下がっている感覚は、たしかに寒いとか冷たいとかいう感覚に近く思える。
この句は血が抜かれる前ではあるけれど、血がある状態でこの寒さだから、抜かれた後はどれだけ寒いのかと思う不安が感じ取れる。自由律でぶっきらぼうにされていることで、余韻を見せず、ただそれだけを言っている感が増している。

「緑青日乗」週刊俳句292号より