大鳶の枯野をふいと襲ひけり  谷中隆子

果てしなく孤独を感じる句だ。鳶が突然枯野に飛び降りたのは、獲物を見つけたからだろうが、それまでじっと、何も見えない枯野で獲物を探す、大鳶。切羽つまっている感がわかる。それを見ている作者側も、そんな枯野で、じっと鳶を見るほどそこにはほかに何もないのだ。枯野をひたすら覆っていた静寂を破った大鳶のその勢いも一瞬で終わり、獲物を得た鳶がそこからいなくなることによって、作者にはさらなる孤独が訪れるのだ。

句集『花摴』(角川書店 2012年)より。