脳を真似て木の根まみれや梅雨後の丘  関悦史

梅雨が過ぎ去った丘はたっぷりと水分をため込んで重たい。その「梅雨後の丘」が脳を真似ているというのだ。脳に似ているというのではなく、真似ていると丘を主体的に見ることで、意志を持つ自然のぬーっとした不気味さが立ち上がる。木の根はニューロンのイメージか。「まみれ」は汚いものにつく言葉なので、木の根を通してあらわれる記憶や知識体系といった人間の脳の機能もまた、必ずしも素晴らしいものととらえていないところに、関悦史の異界性がある。

『第三回 田中裕明賞』(ふらんす堂・2013年1月)受賞記念句会の一句。