落椿に蟻が近づいてきたのを、「うつむきて」と表現した。落椿のあわれさに頭を垂れているのか、「うつむく」という語に晴れ晴れしい気分はない。椿の赤の、どちらかというと重たい色調が、蟻をうつむかせるのかもしれないとも思う。春になって穴から出てきたばかりの蟻だからこそ、うつむいていると捉える感覚が異様で光る。
第一句集『少年』(風発行所・昭和三十年)より。
落椿に蟻が近づいてきたのを、「うつむきて」と表現した。落椿のあわれさに頭を垂れているのか、「うつむく」という語に晴れ晴れしい気分はない。椿の赤の、どちらかというと重たい色調が、蟻をうつむかせるのかもしれないとも思う。春になって穴から出てきたばかりの蟻だからこそ、うつむいていると捉える感覚が異様で光る。
第一句集『少年』(風発行所・昭和三十年)より。