どの虚子好きなの?

「俳句朝日」平成8年1月号より。

久しぶりに一人で古本屋に行くと、そのうち一軒は潰れていて寂しい思いをしました。もう一軒の方を覗くと、僕が生活苦のため手放した本が高値で売られていたりして、懐かしく、寂しいよ気持ちになったりしました。

あー、本を売り、レバニラ定食を帰りに食べて、缶コーヒーを飲む、あー、懐かしいなぁ。ま、もういいや、そういうのは。

今日はコシトキリンにしようかな。平成8年1月の「俳句朝日」から。最近のようだけど、結構前ですね。虚子特集やってまして、今読むと、懐かしい思いやら、ほー、と楽しめもす。雑誌は10年、20年すると懐かしい良い感じになってくるので、部屋が広い人は捨てずに取っておく事をオススメします。

じゃあ雑誌読んでいきましょう。

川崎展宏さんによる虚子100句選が載っています。貴重ですね、虚子ファンも展宏ファンも必見。

そうですねー、注目は…。

接待の寺賑はしや松の奥
鐘冴ゆる第六天をもどりけり
春の寺パイプオルガン鳴り渡る
句を玉と暖めてをる炬燵かな
裸子をひつさげ歩く温泉(ゆ)の廊下

このあたりが入っているところが面白く、ほへーと思いました。誰かの句(とくに虚子)を100句も選ぶと、必ず選んだ人の匂いみたいなものが出てくるのが面白いところ。展宏さんはお目にかかれなかった憧れの作家ですが、あー、展宏さん好きそう!とかキャイキャイ言いながら読むと(一人で)楽しい。パイプオルガンとか句を玉、裸子の句なんて可愛いくてほんと展宏さん好きそうです。展宏研究の際にもこの100句選は目を通すは必要があると思います。広い意味での虚子のどの部分が展宏さんに繋がっていくのかを感じるのもまた楽しいです。

アンケートに「高浜虚子の一句」という定番な質問があり、軽い気持ちで目を通すと、わ、珍しい、面白い、と回答者の豪華さに驚きます。

岡井隆さんの選んだ虚子の句は…

気になるでしょ?

正解は

懐手して論難に対しをり

でした。へー。

馬場あき子さんの選は…

とっても気になるでしょ?

正解は

冬晴の虚子我ありと思ふのみ

ほー、これなんですね。強い句です。これは僕も好きな句です。

吉増剛造さんの選は…

さーて、なんざんしょ

去年今年貫く棒の如きもの

おっ、これですか。

成瀬正俊さんの選
短夜や夢も現(うつつ)も同じこと

成瀬さんの文章がですね。

「現代は、虚子の顔を見たことも無い人が、よく知ったかのように言う時代となった。」

とのこと、気持ちはわかりますが厳しい。

中田剛さんの選
口あけて腹の底まで初笑

これは僕も好きな句です。中田さんのこの句に寄せたタイトルが面白い。「不気味な反響」。

岸本尚毅さんの選
思ふこと書信に飛ばし冬籠

一句挙げる時に、これですか。面白い虚子句はまだまだあるもんですねぇ。

今やれば、回答は大きく変わるかもしれませんね。好きな俳句は、いつ、どこで、どんな気分で、どの程度の集中力で選んだか、によって大きく変わります。

うーん、僕の今の気分だと、一句虚子の句を選ぶとすれば

風生と死の話して涼しさよ

かな。ちなみに今の僕は、そこそこ元気、でも眠し、機嫌はまぁまぁ良しの風呂上り、という状態です。

じゃ

ばーい