正月にいつも読み返す『俳句』はこれ

平成16年1月号角川『俳句』

あけましておめでとうございます。いやー、実家の尾道で、食べては寺へ食べては寺へを繰り返していました。A子はもう寺なんか見たくもないと言う顔をしています。正月に実家でいつも読み返す雑誌があるので今日はそれを。平成16年『俳句』の1月号から。

元日のさして変つたこともせず
桂信子

通。

山谷(さんこく)や猫墜ちてゆく手足ひろげ
金子兜太

にゃーん。

墨匂ふお年玉と書く子らの数
山田みづえ

みんなよしよし。

枯蓮に問はむ俳諧とは何ぞ
津田清子

か、枯蓮に!?

冬の星少年のわれと見てゐたり
川崎展宏

いつでも心に少年を。

この1月号の目玉企画は金子兜太さんと小林恭二さんの対談、これが20歳の頃の僕には面白くてですね、今でもこの企画を正月に実家で読み返してはワクワクします。

岸本尚毅さんの話題になり、所謂「岸本伝説」を知ったのはこの対談から。以下引用。

金子 あの人は物覚えのいい人でしょう。いろいろな句をよく覚えていて。
小林 そうなんです。学生時代からウソかマコトか、俺は十万句覚えている、みたいなことを言ってましたから。

これ、学生の時読んでびっくりしてですね、どうも東京の一流俳人は皆10万句ぐらい頭に入ってるらしい、ヤバいなぁと…。僕田舎モンだから本当にそう信じていて一生懸命「現代の俳句」を暗記しようとしたのを覚えてます。そのおかげで名句をたくさん体に入れる事ができたと思います。岸本さんに「どれぐらい覚えているんですか」と聞いてしまった事があり、「ん~、さすがに10万は…、ま、2、3千ぐらいは…」と答えてくださり、あ、ほんとに10万句入ってるんだろうなと嬉しくなったのを覚えてます。

この対談、そのうち一茶の話題となり、また以下引用。

小林 ええ。ドキッとするような句がありますね。そして、あの人は庶民の俳人ということになっているけれど、実に高雅な句もたくさん残しているんです。
金子 ええ、残してます。高雅と俳諧の境目みたいなところで詠んだ、〈けし提げてケン嘩の中を通りけり〉がありますから。
小林 カッコいい句ですね、それ。金子さんがお好みになられそうな句です。

そう、これで一茶って良いんだな、というより兜太さんってカッコいいなと感じました。以下も引用。

金子 だって、助平なこと、猥雑さ、これは大事な俳諧の一体ですよ。助平なことを言って笑わない人はないもの。笑わない人は病人です。

あ、ゴツいなと、うーん、これ忘れられないんですよね。笑わない人は病人ですってのがすごく気に入ってます。

以下がまたすごい。次世代のリーダーは誰か?みたいな話題です。

金子 それで、もっと極端なことを言うと、本当に優秀な俳人は二十人いればいい。
小林 そうでしょう。
金子 あとはみんな勝手にやらせておけばいいんです。クズみたいな句を作ったって、そんなことはどうでもいいんだ。これもややオフレコに近いけれど、ま、言っておきます(笑)。そういう目で見たらいいんです。

これです、これ。これで学生の頃の僕は燃えました。簡単だから俳句の世界においで、とか言われたら絶対俳句はやらなかったと思います。20歳の頃の僕は、短歌はもう口語の歌が多くて、若い人がたくさんいる、じゃあやらない、俳句に行こうみたいなところもあったと思います。ほんとはそんな簡単なもんじゃないし、口語は難しいものだと今は思ってます。高校生には高校生の、大学生には大学生なりのヒネクレみたいなものがあります。この対談を読んで「俳句はごく少数の人が頭に無数の古今の名句を入れて戦う、なんか棋士みたいなカッコいいもの」という変な勘違いが、まぁ、勘違いして良かったような気もします。

あ、この雑誌が貴重なのは、平成14年の『俳句』でのアンケート「10年後に俳壇をリードしているべき俳人十人を挙げよ」と言う企画の結果が載っていてですね。

一位 長谷川櫂 二位 櫂未知子 三位 正木ゆう子 四位 小澤實 五位 片山由美子 六位 岸本尚毅 七位 中原道夫 八位 石田郷子 九位 田中裕明…

とこれが初学の僕に役に立ちました。だって高知に居て俳句の友達なんか居ないし、誰が東京でブイブイ言わせてるか全く知りませんでしたから。上の俳人達の作品を次々読んで行ってですね(僕真面目だなぁ)、さて、誰が師匠に良いか、と探して行ったわけです。それにしても上のアンケート、今やったらかなり変わるのかなぁ、若いところで、髙柳さんや神野さんや関さんや津川さんとか入ってくるかもしれませんね。麒麟はまぁ入らんでしょう。これからじゃい。

というわけでこの辺でおしまい。

じゃ

ばーい