「ホトトギス」昭和11年10月号より
いやー、ボーナス出ました。出るかな、出るかなと悩み苦しみ、いや少しぐらい出ないと嘘だ、頼むよ、いや、結婚したし、ほんとに、なんてかなり神経質に病みながら待望のボーナスを手にしました。
毎年ボーナスが出るとする事は
①古志の会費を払う②尾道への汽車の切符を買う
という事です。いやー、生きるという事はエネルギーが要りますな。
はい、よろしくお願い申し上げます。と丁重な姿勢でボーナスをA子にほとんど渡して、何事もないかのように、また明日を働くのです。生きるという事は大変だなぁ…。
さ、先週の続きです、久女除名号の「ホトトギス」を読んでいきましょう。
虚子の句日記はどうでしょう。
故郷の月の宿屋にとまりけり
十月十二日。虚子先生愛媛にて大会。
人ごみにありてとぼとぼ秋遍路
あぁー、遍路でもしよっかな、なんて虚子先生、考えた事あるでしょうか。
我が句碑に秋の遍路の佇みぬ
秋遍路「ふー、くつろぐぅ」
あの森に神社あるかや秋祭
さぁ、的な句。好きな句。
蘆を刈る頃は蘆刈る男かな
十月二十八日、丸ビルにて玉藻句会です。多分リラックスしてます。
あぁ面白い。これだけ毎月虚子の句が読めるとは良い雑誌ですね。
次はのどかな雑詠欄を読んで行きましょう。
お、先代吉右衛門さん、三句です。その隣は草田男で三句、隣は泊雲で二句、隣は松本たかしで二句、豪華だなぁ。
温泉の多き土地なり夏芝居
中村吉右衛門
この余裕が良いですね。ちなみに僕が生まれて初めて生で観た歌舞伎は吉右衛門さん(もちろん今の)の「金閣寺」でした、確か福助さんが雪姫でした。
路の幅の自動車茂り映し来る
中村草田男
なんかごちゃごちゃしていて楽しい。
向日葵に煙突に屋根に八雲立つ
中村草田男
なんかしつこくて、やはり楽しい。
青春の碧眼すずし水の上
中村草田男
いつの時代も若い事は恥ずかしくて、あとキュンとなる。虚子がウフフと丸を付ける感じも良い。
夕立あと帯はなやかに立出づる
深川正一郎
華があるなぁ。
足のあとたしかに数へ瓜盗人
西本多景王
高知の方です。いやー、瓜盗人ってやっちゃいけないけど、やってみたい。
同じく一句欄を読んでいくと…
!!
いただきに霧立枯れの木にしづく
長谷川素逝
素逝が一句欄に、レベル高し、そしてほんとにさりげなくスターがいます。
鈴木花蓑に「その外に何もない」と言う僕好みの俳論が。
以下引用
作品を鑑賞する場合、何かそこに特殊なものがあるかと思つてあまり深く考へ過ぎるととんでもない間違ひを起すことになる、そこには特殊な何物も介在してをらぬ、その外には何もない。
引用終わり、ちなみにその例句は
水に出て犬ふりかへる花菜道
夢里
そうです、別になんでもない、そこが良いんですよね?花蓑さん。
巻末近く、ペラペラ捲ると、お、「玉藻」の広告がありますね、どれどれ。
添削指導
虚子・泊雲・枴童・立子
が添削指導してくれるらしい、わぁ、豪華ですね。ちなみに「玉藻」は一部 四十一銭です。「ホトトギス」は一部 五十六銭です。今で言うと、今と同じぐらいですかね、多分。
あー、面白いなぁ。
古い雑誌には面白いワクワクが詰まっています。久女除名号の凄いところは、除名の記事もチラリと、他の記事も変わりなく面白い記事が並んでいる事でしょうね。
じゃ
ばーい