2007.2.12新学社発行
近代浪漫派文庫39前川佐美雄/清水比庵
昔々、なんだか急に魯山人の器が見たくなって、鎌倉へ行った事がありました。で、せっかく見に行ったわりにはそんなに面白い魯山人がなくて(料理を全くやらない人に魯山人はわからないのかもしれません)、ふーんと思いつつ美術展をうろうろしていると…
おっ、楽しい画がっ!?
そこには富士やら野菜やらが楽しそうに描いてあって、そしてまた楽しげな字で歌が添えてられていました。その時覚えた名前が清水比庵、はい、今日やる人です。
清水比庵、書や画を見かけると嬉しくなって夢中で見ますが、歌だけというよりは、書画込みで愛されている人でしょうかね。
あまり最近の歌人の方から「比庵って良いよね、可愛いよねー」とか聞いた事がないのですが、最近は読まれなくなっているのかなぁ…。
めでたくて、可愛くて、嬉しい歌、そんな歌、そこに特化している歌が読みたくなる時があります。
今、楽しいだけの歌、というのが出てくれば、新しいんじゃないかなぁ。
はい、じゃあ、清水比庵さんの「野水帖」より、今日は短歌ですよー。
朝起きのこの頃よろし戸をあけて椿の花をすぐに見るゆゑ
椿があれば楽しいと思えるように、老いていきたい。
食堂車ひとつひとつの窓ごとに桃の花挿し大阪へゆく
桃の花がぴったり。大阪という場所は、とにかく楽しいところ。今年も行きたいなぁ。
山の上の中学校は白雲の桜の花のなかにありけり
なんとも心があたたかーになる歌。最近は中学校と言われるとそれだけでキュンとします。あぁ、僕、卓球部だったなぁって。
一つ鳴く蛙はあはれゆるやかにおなじことをば鳴きてをるかも
蛙「ネムシネムシネムシ」
僕「めしめしめし」
風鈴の鳴るをききつつ寝しわれは今朝目さましぬその鳴る音に
毎日が日曜だったら良いのに
むらさきの桔梗の花は朝露にひらきそめたり後ろに向きて
この後ろに向きてが健気すぎてキュンとなる。
へうたんの棚の目ごとにへうたんは生りて下れり棚の目ごとに
働かずにへうたんを見ていたい。ダメだけど、働くけど。
皆人の麦稈帽子色古りて秋風立ちぬ銀座日本橋
初めて東京に来た頃は、銀座を行けば京橋になり、日本橋に着く、というのに気がつくのに大分時間がかかったもんでした。
わが父の命終りし齢ともわれはなりけりあはれなるかも
詩歌は長生きすれば、なんだか新しいものが作れる、と、この頃は特に信じています。だから年金も払おうかなと。いただけるのかなと、年金。
次の駅は何といふぞもわが前に掛けし娘の下りんとするは
最近子供達が元気に動いている様子を観察するのが好きです。あぁ元気だなぁと嬉しくなります。
みち問へど紫苑の家も鶏頭の家にも人の居らずありけり
ひょこひょこ歩く軽快な人になりたい。
読み返すと良い歌ばかり、この本手に入るからぜひ読んでみてください。それじゃあ
ばーい