不思議な虹を皆で見る⑧

2015.4.30 書肆山田刊行 冬野虹作品集成 第1巻より

暑い、とにかく暑い。

乾燥が嫌で、朝起きると喉が痛くなるので、数日前まで冷房無しの生活をしていました。皆さんそうでしょうけど今年も気が狂いそうに暑いので、とうとう限界が来て冷房に頼り始めました。

妻に頼んで、買ってくれ買ってくれと喚いたところ、氷枕と言うのか昔からあるアレ、冷凍庫に入れておくと冷たくなってタオルとかで巻いて枕にすると良い気持ち、と言うアレを手に入れました。

その気持ち良さったら、こんな最高な道具が¥598だなんて、すごいじゃないか。羽の無い扇風機、高いやつ、冷房を使わないから買ってくれとイオンに見に行ったら、ほぅ、羽も無いのに随分高額じゃかいか、と却下。我等は庶民であると。

氷枕ちゃんが毎晩とってもよく働き、頭痛がする時はこめかみをこすりつけ、さらに胴体も暑いので瀕死の甲虫が葉っぱを抱くように、氷枕ちゃんを抱きしめて、あぁ、ひんやり、ひんやりと味わっています。

アレ、良いよ。

冬野虹さんの俳句、今回で最終回。短歌や詩も残っているのでまた別でやるかもしれませんが。

今日は結構長いです、それだけ面白い俳句が残っています。

ブラウスに湖水の反射蟲封じ

くらくらとした何かから護られているのかなと。意味を追求するとつまらなくなるので、のびのびと想像した方が楽しめます。蟲は虫では駄目で太古であるとか玉虫とか呪術的なイメージが浮かびました。

聖一遍ひんやりとした雨に

冷たい雨でなくて、ひんやり。そしてひんやりした町ではなくて雨。

足袋のやうな晩夏のひかり戸の上に

巨大なひかり、足袋のような。

初霜にチャチャチャのリズム揃ひけり

チャチャチャはトゲトゲ。

桔梗の蕾の中は砂嵐

これすごい句だなと。普通なら桔梗の蕾の中は何か「良いもの」を入れて詠むと思うんですが、なんと砂嵐。

コピー機の音に目覚めぬ山の鳥

コピー機の、と言う出だしがとても涼しい。

電球のやうに思ひぬ丘の草

なんだか、ふと天国のような。

かんがへる涼しさの長エプロンよ

これ、順番を色々入れ替えてみると、かんがへる、以外に面白くならないから不思議。

海染めて魔王の咳のしづまりぬ

これびっくりしました。さぁーっと海が染まって行く感じがします。

ペンギンのゆらゆら泳ぐ秋彼岸

秋彼岸が不思議さに合っていて、ゆらゆら泳ぐが空中のような錯覚を受ける。

三宝柑海の温度をすばやく答へよ

急に句の中で速度があがる、ジェットコースターみたいな句。

はっはっと犬走り寄る枇杷の色

どちらかと言えば猫派だけど、時には、はっはっと来る犬も可愛い。

水底の草に呼ばれぬはるまつり

明るい明るい水中の。

六月のゼリーにかみなりさま坐る

ちょんと、かみなりさま。

山崎の長者の細い火吹竹

細い長い、山崎の。

白梅や図書館に気絶してゐる

早春の気絶。

五月闇裾に刺繍の大手毬

浮かんで大きな大手毬。

いろいろの種類の兎かたまった

うーさぎーさんがかたまった!確かに兎には色々な種類。

カスタネットは夏を鬱陶しく刻む

夏だなぁ、暑い、だけだなぁ。

手の甲の血の筋青し近松忌

人間の恐さも面白さも。

重い箪笥送られてくる初笑

これは良い句。さて、箪笥は重くありがたく。

梅の花車は鐘のやうに止まる

確かに。クルマハカネノヨウニトマルの音のよろしさ。

秋草の草のいのちを踊るかな

それも私の秋祭。秋草の精になったようで美しく楽しい。

ばら色の高脚カニのもの思ひ

ばら色のゆーっくりと脚。

泣かないで丸餅三つ走ってゆく

泣きやむよ、とでも言いたくなるような句。丸餅もまた可愛い。

六人のひかりの箸や栗御飯

美しい宗教画のような句。六人が絶妙。

しらしらと燃ゆる一章芽ぶく砂

この句が最後に置かれているのが印象的でした。終りのようで全然終りじゃない、と言ったところでしょうか。

さて、冬野虹さんの俳句、八回かけて読みましたが、ゆっくり読めばゆっくり読んだだけ味わえるような本でした。俳句の巻で時々立ち止まって詩のところを読んでみたり、短歌を読んだりすると、より楽しいかもしれません。

次は何をしようかな

じゃ

ばーい