封緘は静かな場所で

2015.6.10 文學の森刊行
藤井あかり句集『封緘』より。

好きな場所、思い出す場所がいくつかある。

尾道では艮神社、天寧寺。鎌倉では極楽寺が一番好き。京都は光悦寺と法然院の居心地が良かった。

日頃観光地で外国語がわあわあ飛び交っているところで働いているので休日は静かーに過ごしたい。

日曜の朝、村上さんから貰った冷やしあめを飲みながら読んだ句集が素晴らしく、秋の朝によく合うなぁと。

今年注目の句集ですので読んだ方も多いかと思いますが、素晴らしいので改めて、藤井あかりさんの句集『封緘』を読んでいきます。

綿虫に人の眼の満ちて引く

あ、綿虫が。あぁ綿虫。

冬桜遠くの町は青みつつ

冬桜と青が美しく響いています。この句大好き。

枯園やなみなみとして水たまり

なみなみと冬の水。

柿落葉大切になる前に捨つ

大切は大事よりも大切で良い。

丁寧に書けば書くほど悴める

あかりさんは字がとても美しくて、手紙等頂くと一文字づつ見てしまいます。

翡翠の過ぎたるのちの冬の水

翡翠と冬の水って合うなぁと感心しました。翡翠って最近は一年中居るような気がするけど、そういうものなのかな。

鳥籠に鳥のおもかげ冬館

鳥籠を見つめる視線が優しい。

石大工冷たき石を選ぶなり

気持ちよくて綺麗な石。

太陽のぼんやりとして冬桜

これも好き、ぼんやりが冬らしい。あかりさんはきっと冬桜が得意な、合う季語なんでしょう。

探梅や机の上をそのままに

楽しい探梅へ。

探梅のまぶしき顔はさびしき顔

これも探梅らしい。まぶしいはさびしい。

窓開ける雛を飾る日と決めて

光が中へ。

ふつつりと蝶ゐなくなるはこべかな

ふはりと蝶がいたはずの。

川筋にひらけし町や初燕

あかりさんの句集は秋や冬のイメージがあるけど、決して人が嫌いなわけではない、とこういう句を見ると思う。初燕に喜びがある。

忙しき人と見てゐる桜かな

俳人と老人はずっと見る。

ぼつてりと届く封書や花の昼

音が嬉しい。

はくれんを好きな理由を思ひ出す

はくれんには良い思い出。

ペンをおくとき本当に春終る

あっという間に葉桜の頃。

呼鈴を深く押したる薔薇の雨

紅茶が好きな魔女が住んでいそう。古い洋館でも良い。

夏蝶にしばらく日陰なかりけり

夏蝶の力強さは見ていて元気が出る。

万緑やきらりと窓の閉まりたる

あそこに誰か。

ちらちらと空見えてゐる青葡萄

少し見える空の青さ。

空よりも町広々と吊荵

好きな町。

印刷屋すずしき音を立ててゐて

気分が涼しい。

足元の草暮れてゆく端居かな

長い静かな時間。

鵙のごと鳴けざることの悔しかり

時に激しく。

豆引くや翳のある人だと思ふ

色々とある人。

長身をもてあますとき秋蝶来

すらり秋蝶。

花野ゆく呼ばれ続けてゐるごとく

ちょっと怖いような美しさのある句。

雨音に窓開けておく夜学かな

雨音は落ち着くから好き。

秋灯舟のかたちに籠を編み

好きな形の舟を編み。

良い句集でした。

じゃ

ばーい