2015.9.25 ふらんす堂発行
飯田冬眞句集『時効』より。
冬眞さんと初めて会ったのは八年ぐらい前だろうか、頼りになる方なので、困った時に連絡をしては、困らせてしまうことが多い。
「あのぉ、○○の○○の資料とかお持ちでないですよね??」
的なメールを送る。
そうすると冬眞さんは「とあるところ」に忍び込んでは資料を入手してくれる、いや、ほんと、ごめんなさいといつも思っています。
冬眞さんの今まで読んできた俳句の資料はぞっとするほどのものだから、僕が「○○の○○」とかメールを送ると、即座に、何がやりたいのか、何が必要なのかまでわかってくれる人です。だから悪いなぁ、すんません、と思いつつも、ついつい頼ってしまう。
僕は結局、たくさん読み込んできた人が好きだ。
そう言えば、冬眞さんが飲みながら「麒麟ちゃんが60歳まで無名だったら、曾良みたいに一緒に全国まわって担いで有名にしたげる」と約束してくれた。
それはそれは楽しい旅になるはずだと、楽しみにしています。僕が60の時、冬眞さんは多分80近いけど、よろしくお願いします。
登四郎はまだまだ続く予定だけど、今日は飯田冬眞句集『時効』を読んでいきます。
海鳴りや父の帰らぬ雛の家
父はどこかに。海鳴りが良い。
大安の予定からつぽ夕雲雀
からっぽ感。
太き眉持たねばならぬ花守は
ごんぶとで。
合羽着てイルカショーみる昭和の日
いつの日も楽しいイルカショー。ちなみに僕はすみだ水族館の年間パスポート持ってます、イルカショー無いけど。
大朝寝遺影めきたる社員証
とあるところの社員証。
はんざきのげんまんしたき薬指
これは可愛い。どの指もまるい。
海の日のきれいな敬礼受けにけり
まぼろしの敬礼もちらちらする。
家に帰るために働く雲の峰
男とは。
押入れの闇うらがへす冬支度
男とは。
向き合うて顔忘らるる冬泉
冬泉の清潔さが哀しい。
次々と神降りて来る風車
ぞくぞくと。
賞状の並ぶ仏間や夕薄暑
仏間らしさ。最近、仏間や仏壇がどんどん好きになってきています。なんだろうなぁ…。盆栽を見るような目で仏壇を見ると、なんだか色々見えてくる。
隅つこの好きな金魚と暮らしけり
金魚と私と。
添へ書きのなき賀状だけ寄せておく
大量の。
母の日の母と遺影を撮りに行く
この句は良い。人生を感じます。
人許すことも覚えて桜桃忌
偉いですね。でも桜桃忌だからなぁ、ほんとかなぁ。
蓮池や星のかけらを売る男
そんな暮らしも良いなと。『無能の人』なら石売りだけど。
雷神に突つ込んでゆくカーラジオ
会社を早退して。
鉛筆をただ尖らせて開戦日
ふつふつと内心。
時効なき父の昭和よ凍てし鶴
それぞれの、さまざまな時効。
なで肩のペンギン並ぶ日永かな
ペンギン「やる気は特にありません」
マンモスを追ひ詰めてゐる昼寝かな
この夢には強いストレスを感じます。ぜひこの昼寝は職場であって欲しい。
島の壺どれもいびつや石蕗の花
働かず、島でのんびりしたい。有給を使ってみたい。
冬服にたつぷり浮力ありにけり
どこまでも浮力。
ラグビーや人は何かをはみ出して
理屈じゃないぜ、人生は。
何にも教えてくれず、ある日突然句集が届いたもんだから、びっくりしましたよ。また悪い話でもしましょう。
じゃ
ばーい