晴れての晴子③

平成14.6.30 富士見書房刊行
『飯島晴子全句集』より。

久しぶりに寄席に行きました。
根がすんごく暗い、根暗な僕が一人で声を出して笑う場所は寄席ぐらいじゃないかなと。
あははー!と大声を出すんじゃなくて、くふふ、はは、っと少しだけ声に出して笑います。

さて、笑わします、と出て来てちゃんと笑わしてくれる、すごいなぁと。

今日は鈴本、明日は末廣と連日長々と寄席で遊んでふらふらと帰って来て、酒飲んでさっさと寝る、そんな老人になりたいもんです。

老後は遠くにありて思うもの。明日も朝から仕事です。年金なんか僕の時代には無いかもしれないけれど、たまには寄席に行けるぐらいの生活がしたい。

句集『春の蔵』より。

疾風に大きい鶯飼つてゐる

デカ鶯のよろしさ。

うしろからいぼたのむしと教へらる

ですじゃ。

かくまはれ鮎をくはされゐたりけり

鮎という文字だけがすっと浮かびあがって見える。平仮名はゆらゆらと煙のにように見え、時間を感じさせる。

婿は見えたり見えなかつたり桔梗畑

ちらり婿。

さきほどの人は盥に冷えてをりぬ

きんきんに冷やしてます。

献身やあやめをざつと見渡して

一瞬だけ刹那が走る。一瞬だけ。

初夏の大きくてさびしいオムレツつくる

優しさはさびしい。初夏に工夫がある。

朝の柳ぐるぐるくぐり似てくる三人

二人でなくて三人。ぐるぐるくぐり、家族で無い方が面白い読みかもしれない。

人形の胴に穴あり秋の暮

そこからもうもうと、何かが。

大人になるとにんじん畠にゐなくなる

心のどこかの消えない風景。

ももいろの凧を飾りて怨むなり

恨むの千倍怨んでます。

春の蔵でからすのはんこ押してゐる

繰り返し繰り返し、そんな春、そんな蔵。

おとろへの絲遊をよぶ畳の上

よろよろの絲遊。

ていねいにからだを拭いて黒鯛くふ

月のような黒鯛。

ぎりぎりまで青蟬さがす男女かな

神話のようで良い。日常を神話のように。

寺ふかく赤子に白湯をのませてゐる

普通のことを特別なように。

冬鳥よ砂に大仏画いてある

ありがたーく、大きーく。

牛にまたがり馬にまたがり氷見る

全てが美しい時間。

神在(かみあり)のはうばうにうつくしき夜道

さて、どの道もよし。黒の美しさ。

梅林をめざす手足に音もなし

さわさわ。

犬小屋に故人来てゐるさくらどき

一種の照れのようなもの。

玉虫の色にさそはれて闘ふ

くらくらと美に酔って。

この人のうしろおびただしき螢

ふっと身近に黄泉の国。

大章魚を愁のごとくさげてをり

大章魚たらん。

緑の細い電車に乗つてくる乳母よ

遠い過去から来るかのような。

月光の象番にならぬかといふ

はい、いいですよ、とは素敵な幻。なりたきものに象使ひ、これは素敵な夢。

鴨の湖ここで一度に怒りけり

後では、怒らないで欲しいなと。

面白いですね、説明出来ない面白い句もたくさんあります。ぜひ読んでみて下さい。

じゃ

ばーい