晴れての晴子④

平成14.6.30 富士見書房刊行
『飯島晴子全句集』より。

妻が掃除をしたいと言うので、一人とぼとぼ出かけてみたけれど、行くところが無いので新宿の寄席へ。今月二回目の寄席です。

二時間の立見を含め、計七時間ほど寄席に居ました。

時々、へへへと笑う、そういうのが、いい。誰とも話したくないけど寂しい、そんな時は寄席に行けば良い、そんな場所です。

『八頭』を読みます。

鴨屋一軒見事な風の吹いてゐる

「見事」が気持ちよく効いている。

雨の上人うぐひす近すぎはせぬか

もうちっと向こうへ。

韓国より帰りて雛かざりけり

帰って来た感。近いけれど遠いだけに面白い。

菊人形とぼしき声をあはせける

大小の菊と人形と人間と。

恋ともちがふ紅葉の岸をともにして

これは有名句ですね。紅葉には思い出せる句が少ないけれど、この句なんかは紅葉で無ければいけない素晴らしい句。

いつも二階に肌ぬぎの祖母ゐるからは

「いつも」です。

あの人もこの人も死ぬ鈴蘭摘

わたしだけ死なないことの恐ろしさもある。

瓜うまきここ今伊勢といふところ

「ここ」が現在と古き世を行ったり来たりする。

門前の金柑男のやうに噛む

金柑はあの大きさが良い。

鴨のこる池が真中競馬場

鴨が見ている。

わがたましひ赤鱏となり泳ぐかな

これも好きな句です。ひらひらと、少し不気味。

長老のごとくに春の瀧を去る

長老の瀧。

わが墓穴青き沢蟹一つ這ふ

いつの日かの静かな時間。

夏蜜柑ところどころに置きて鬱

一つ鬱、二つ鬱、三つ鬱。

牛飼が好きで牛飼ふ秋の風

好きでやってます。ほんと。

骨董屋冬の金魚のなまなまし

金魚意外乾きまくっている。骨董屋の親爺も。

金屏風何とすばやくたたむこと

現実にある不思議。誰も不思議と思わない、不思議。

囮鮎こまかく震へ沈みけり

丸ごとのあわれ。

天狗団扇ここに生まれてここに死ぬ

決まっているんだ。

干し瓢十ほど何となく頷く

ただただそこにある。十ほどってところにも味がある。

遠くより雪吊高く見ゆる家

いい家。ここから見ても。

鴉の子尻なき尻を振りてけり

子どもの頃は可愛い。すぐに大きくなるけど。

表面の面白さと、底にある面白さと、両方味わいたい。

じゃ

ばーい