晴れての晴子⑤

平成14.6.30 富士見書房刊行
『飯島晴子全句集』より。

仕事を頑張っています、なんて人に言うのは恥ずかしいことだと思っていたので、頑張ってません、全然暇です、忙しくないです、余裕です、と言ってきました。

すると、だんだん本当に働いていない人だと思われてきてしまいました。朝は6時起きで、土曜や日曜(交代でね)も仕事で、年末は30日まで働いて、有休なんか使ったことが無いのに。それなのに、それなのに、皆僕が働いていない人だと思っている…。ふと思い出したけど、飲み屋のギャグで、アルチューで乱暴、とかいうのがあったな。

近年は、ちゃんと働いています、朝も早いので夜も早いのです、はい、あまり飲んでもいません、まっすぐ帰宅しています。

と言い続けたおかげで、大分働いてることが認知されてきました。

いや、働かなくても生きていけたら…、やめとこう、そういうこと書くからダメなんだな…。嫌だけど、働く、それが僕です。

『寒晴』を読みます。

みぞはぎは大好きな花愚図な花

精霊花ですね、こんな句を読むと花の画像を調べたくなります。便利な世の中。読書が辞書を開きたくなるような、そういう句がいい。

瓢簞の足らぬくびれを云々す

云々云々。

水温む赤子の名前覚え難(にく)

下五の技術。真似したのがバレるように使うと浅いけれども、晴子さんの句はとても勉強になります。

はぐらかすごとくに春の瀧細し

煙のような。ないようである。

土筆折る音たまりける体かな

私にだけ妙にはっきりと聞こえてしまう。

死ぬ人の大わがままと初蛙

死と日常と。大わがままが哀しい。

死者のため茹でたての蝦蛄手で喰らふ

無言でばりばりと剥き、食べる。

けふあすは誰も死なない真葛原

しんとした、透明な空気の。

黒雲の豪華なりけり月今宵

好きな句です。黒雲の美、「豪華」が効いている。

秋くらきならの小川の面かな

暗き奈良とくらきなら。くらきならは少しこの世から離れて見える。

螢の夜老い放題に老いんとす

90分老い放題。

沼奥の浅沙の花に呼ぶ人なし

咲くのは晴れの日だけらしいですね、はい、句を読んでから調べました。晴子さんの句は調べた後で、あぁしっくりくるなと納得します。

はたき落したきはんざきの眼かな

のそっとしたあんたが嫌い。

貧相な春の横雲わが先に

豪華の黒雲と貧相な春の横雲。

又たれか鐘撞いてゐる山紫陽花

遠くから聞こえてくる、人の姿や寺は見えずに。

渡り来る人なき虹のたちにけり

誰か来ないかと。

凍鶴となる際(きは)の首ぐぐと入れ

ぐぐ、が見えるような句。

春の富士いかにも白くこつてりと

いかにもな富士。富士にこんな詠み方があったんだなと。

冬虹のいま身に叶ふ淡さかな

ないようで、ある。その絶妙な淡さが好みなんじゃないかなと。

身近な人の死もあり、句集の匂いが少し変わってきたような感じがあります。『寒晴』は全句集の中でも注目する一冊でしょう。

じゃ、今日はこの辺で。

ばーい