365日の花

2016.5.26ふらんす堂刊行
片山由美子句集『昨日の花 今日の花』より

 

最近は不景気で若い人の生活がこんな風に変わった、的な記事を読みました。

衣食住のうち、人の目を気にするあまり、衣と住の予算は削れなく、他人から見ると優雅な生活をしているように見えて実はろくに食べていなく、辛い、みたいな。

違うぞ、それは違うぞと言いたい。

服は安くて良い、時計は無くても大丈夫。見栄張って都内に住まずに、僕が住んでいるような雉子や蝮やほととぎすがいるような町に住めば良いではないか。

美味しいもの食べようよ、安いけど美味しいものだってある。たまには美味しい酒も飲もうよ、プチ旅行も行こうよ、近所だって楽しいもんさ。

俳句をやろう、そして辛い時には寄席か美術館に行く。お金が無くても身に合った暮らしをすれば、笑って生きていける、多分。

楽しく生きていこうよと言うことで、今日は、片山由美子さんの句集『昨日の花 今日の花』をやります。ふらんす堂刊行の365日俳句日記シリーズの一冊で、俳句に日記のような文章が付いているのですが、このシリーズはとても面白い。読めば読むほど作者のことが好きになっていきます。

片山さんのは、やたら相撲やフラメンコの話が出てきたり、きっちり家計簿をつける話や、ささやかでも年中行事を出来るだけやるようにしている、など、日々の生活を楽しんでいらっしゃる様子が実に面白い。

文章も良いのですが、俳句だけ紹介しますので、文章は買って楽しんで下さい。

人日やはや郵便の溜まりだし

どんどん来ます。

かく小さきお供へなれど鏡割

やるはやる、やれば楽しい。

初場所や贔屓力士のやつと勝ち

片山さんの贔屓の力士は誰か?本を買えばわかります、へぇ~となりますよ。

どう被りても似合はざる冬帽子

色んな角度から試す。

採血の上手なナース春近し

助かる。

粒あんがよし草餅もぼた餅も

僕も粒派。

春場所や波乱いささかありてこそ

夕方を飲みながらテレビで相撲を見ている、そんな晩年来ないかなぁ。

腕時計進め今日から夏時間

夏時間よ。

春の日の東京ドームふくらめる

今日も何かやってるドーム、楽しいドーム。

オレンジを搾るに力夏に入る

ぎゅっは夏に合う。

若竹やたちまち過ぎる締切日

伸びて行く若竹、迫り来る締切。

ほうたるや京に心を残しつつ

京で当分のびのびしてみたい。

短夜の夢に疲れて覚めにけり

夢って案外疲れる。鮮やかなくっきりした夢ほど疲れます。

三伏や効きさうもなき薬飲み

飲まないよりは。

風鈴や明日に延ばせぬことばかり

ならぬものはならぬのです。

株価見て日経平均見て秋暑

あぁーあ、と。

台風が並んで進む太平洋

台風と台風。

残る蚊の乗り込んで来るエレベーター

密室での蚊、打つかどうするか。

店先の秋果の色のまた増えて

うふ。

声大きことも福なり新走り

福と思えば福。

暖房をつけて仕事をもう少し

寒いし、眠いし、疲れたし。もう少し。

室咲やよき占ひは信ずべし

万事オッケー。

旅二日ひび皸のはや消えて

あと何日か延ばそうかしらん。

この句集は文章とセットの方が何倍も楽しいので、ぜひ読んでみて下さい。

じゃ

ばーい