2016.4.20邑書林刊行
嵯峨根鈴子句集『ラストシーン』より
一人で食べるならラーメンが良い。知らない店に入らなければならないのなら、ラーメン屋を選ぶ。
銀座の1000円ぐらいするラーメンは美味い。お洒落な男女が並んでいるし、店内も綺麗で店員さんすらどことなくお洒落。チャーシューも麺もスープも、上にのっかっている野菜すら、みな美味しい。贅沢で幸せな気分になる。
でも一人の時はそういう店は選ばない。
尾道の550円のラーメンが好きだ。チャーシューはぺらぺらで、よくみる具しか入っていない。
そんなラーメンをズズズズーっと啜るのが、僕は好き。駅の近くにね、あるんです、一軒良いところが。
嵯峨根鈴子さんの句集『ラストシーン』を読んでいきましょう。
全員のたどりつきたる春の罠
昔レミングスという楽しいゲームがあったな。
わたあめもまんかいのさくらもきらひ
幸せが、過ぎるのはちょっと疲れる。
子かまきり本気の数となりにけり
わらわら。
汗だくの一心不乱のロクロックビ
生きるとは、一生懸命。生命感がどぎつい感じが良い。
手探りにスイッチ押しぬ雛の部屋
びっしり待っているお雛様。
みな帰りたる噴水に話がある
もの申す。
ふうりんのぢつとしてゐる鱧祭
そんな時期のそんな時の。
蚯蚓鳴く三千世界が赤信号
好きな句。行っちゃおうかなと思ってくる。
虫籠にデーモンひもじく飼はれをり
これも好き。これはサタンでなくてデーモンですね。何食べるんだろ、デーモンって。
虫籠に持ち込むダブルベッドかな
デーモンへ。
海市まで火を取りに行く私かな
海市と火と私がゆらゆら。
封してもやつぱりこはい蝸牛
動いてもこわいし、動かなくてもこわい。
鶏頭が仏のこゑを使ひをり
鶏頭は頭の一字がおっかない、いや鶏もなかなか。
絶妙なところをついている面白い句集です。
じゃ
ばーい