2017.11.30邑書林刊行
上田信治句集『リボン』より
今年ももうちょっとで終わりですね。今年も楽しことがたくさんあったけれど、不思議と一つ一つがくっきりと思い出せない(忘れたわけじゃないんですよ)のは年末で仕事(31日まで仕事)が忙しいのと、句集(自分の)が忙しいのと、年賀状を書くので忙しいせいでしょうか。思い出達がミックスジュースのように混ざり合って、あぁなんか、色々あって楽しかったなぁとしみじみしています。
来年も、きっと色々あって、でもまぁ楽しかったなぁと言う年にしたいなと思っています。
さて、今年最後のきりんのへやは、上田信治さんの句集「リボン」です。今さら紹介しなくても、大変面白いと評判ですが、もう一回読んでみましょう、面白いですから。ではでは
うつくしさ上から下へ秋の雨
が降るよ。
冬の水いまにも眠りさうな人
まぶたに書いた瞳黒々。
春の蟹わあつと笑ふ女のひと
こういう人を眺めているだけで幸せな気持ちになる。
白い部屋メロンのありてその匂ひ
これはメロン。
石投げて池に氷や白く撥ね
タン。
夕焚火見てゐる人が窓の中
見ている人がいる。
音楽を鳴らして冬の海へ行く
ダメなんだけど、イヤホンで大音量で聴くのが良い。体に悪いから、ダメなんだけど。
幅広きこけしの顔や菊日和
時々キュッと鳴く。
落ちる葉のすつかり落ちて休憩所
すっきりとした空間。
その上をひかりのとほる運動会
走る跳ぶ、光が。
夢のやうなバナナの当り年と聞く
そんなバナナ。
なんといふ夏の夕べや松坂牛
なんという素敵な下五。松坂牛が動かない、とか句会で言ってみたい、どう動かないかはわからないけど、そこが良い。
上のとんぼ下のとんぼと入れかはる
下のとんぼも上のとんぼと。
春きやべつ心のこもつた良い手紙
春きやべつに優しさを感じる。
椎茸や人に心のひとつづつ
焼いて醤油つけると美味しいもの。
横顔や塩鮭よりも冬日を浴び
横顔と塩鮭と。
秋の魚かさなりあつて眼が大きい
大きくて、綺麗で。
今年はこれで最後かな。
じゃ
ばーい