佐藤佐太郎全歌集
昭和52年11月10日、講談社発行
あすこの飯が美味いだ不味いだの言うのは下品な事だ、何が出てきてもそこそこの顔で食べて、イケないと思ったら二度と行かなけりゃいい、というような事が立ち読みしていた本に書いてあって、あー、うんうん、そういうのが粋でカッコいいなぁと関心したけれど…。
いやでも飯がうまいだ酒がいいのだぐらい言うぐらいしか楽しい事なんてないじゃないですか。やれ吉野だ近江だ最上川だなんてそりゃ僕も遊びたいけどそうもいかないもんです。庶民である事を楽しみ無様に酔いたいじゃないですか、酒こぼしたりしてさぁ…。
先日、A子とたまにはちょっと贅沢しようと言う事になり、すごく美味しかった洋食屋(麒麟だって拉麺ばかり食べているわけではないのだ)に久しぶりに行ったは良いんですが…、味もサービスも残念に成り下がっていて、あぁーあ、しょんぼり…。でも有名な店なのでこれからも繁盛するんだろうと思います。美味くても不味くても、繁盛し続けるというのは、なんだかあわれな気がします。
さ、短歌を読みましょうかね。
今日は伝説の歌集『歩道』から
昭和八年(佐太郎24歳!)
敷きしままの床かたづくるもまれにして家に居るけふは畳つめたし
昔も今も男はこうです。最近A子が茂吉全歌集が痒いからと言って家に来ません、A子よ…。
傾きし畳の上にねむり馴れなほうとましく夜半にゐたりき
これ読んでる一人暮らしをした事のない人へ(あまり居なさそうだけど)、人間はどんな環境でも馴れます、ほんと。
空ひくく鵜の還り来てとまるとき群れ栖みし鵜はしばしさわぎぬ
あまり歓迎されてない…、鵜の世界も色々大変なのです。
地下室の水槽にすむ赤き魚ゆふぐれにして動かず居りぬ
うわぁ…、不気味。なんの魚なんでしょうか…、赤き魚、うーむ…。
昨夜(きぞのよ)に泥づきし靴もまづしくてデパアトの屋上にをりし一時(ひととき)
うわぁ…、ありました僕にもそんな時代、24歳とはそういう年頃なのかな…。
ここの屋上より隅田川が見え家屋(かおく)が見え舗道がその右に見ゆ
ただただ見るのです、ある、そういう事
谷の上のむなしきに飛ぶ白き雲見つつ疾しと吾はおもひき
佐太郎「疾しっ」
みづうみの水うつりゆく浅川に水草(みくさ)は青しなびきたりけり
なんでもないけど、非凡な青さ清らかさ、あぁ~、スッキリ
この原に夕ぐるるまで響きけり隣りし家に木を挽く音は
夕ぐるるまでずっとそう
朝寝(あさい)してまづしき部屋にめざめたり秋の日は差し窓にするどし
貧乏は秋にひしひし感じます、ほんとよ
人生色々あるけれど、すっきり佐太郎、また来週。
ばーい