松竹梅、もしくは明けまして水竹居

                                                                 昭和25年、富山山房発行『水竹居句集』

明けましたねー、おめでとうございます。尾道でよく食べよく寝て過ごしています。母の愛によってあまりに食べさせられ過ぎ、お腹の調子がやや悪いです。しかしばくばく食べるのもまた孝行、負けずに食べ続けようと思います。
でもね、僕八月で三十歳ですから高校球児のようには食べれませんぜ…。

せっかくお正月なのでなにかやろっかなぁ

なんか、楽しいやつが良いですよね。

よしっ

前から一度まとめて読みたいと思っていた作家がいたのでこれを機に楽しんでみようかと思います。

赤星水竹居さん(1874~1942)やります。

『虚子俳話録』なんて面白い本を出してますし、三菱地所社長、すなわち丸ビルのオーナーという事で有名ですね。

句会で調子が悪いと虚子を置き去りにして車で帰ってしまうというエピソードがオチャメですが、面白過ぎるのでほんとかなぁと。

虚子が『水竹居句集』の序文を書いているんですがさすがに良いところをついています。

「父上様の文章も俳句も、一見技巧として見るべきものが無いやうな心持が致します。何の飾り気もなく、至つて素朴な点に、一家の風格があるのでございます。技巧の見るべきものが無いやうに見えるところは、却つて大きな技巧の存する所でありまして、人の企及し難いところであります。」

おおこれは虚子に言われたら嬉しい。

さ、どんな句があるのかなぁ、皆様一緒に読んでいきましょー。
炬燵に入ってお茶飲みながら楽しみましょう。

我藪の筍食はん庵の春

もう一回言うなり。我が藪なり。

寒菊や桐の火鉢に熊の皮

熊の皮がいい味です。来客が驚けば主人が喜ぶ。「いやいやなに、熊の皮ですよ」的な。

山茶花やよく掃いてある朝の庭

水竹居さん「うむ、よし」

イメージ

家具展に人たかり居る師走哉

どれどれ

着ぶくれて雪見の舟に乗りにけり

寒いけど行きたい

河豚会に招かれて吾行かざりき

もう一回言うぞ、吾行かざりき!
…行きたかったんじゃないですかね。

友連れて地下食堂や梅雨の町

この「友連れて」の飾らなすぎる上五に痺れます。好きです。

粒細き葡萄の種を吐きにけり

これなんか楽しい句です。吐きながら考えたのか、吐いてから考えたのか。

向き合うて菊の莟と莟かな

男は菊が大好き。浪漫がある。

初凪やチョロチョロ寄する浪頭

確かにチョロチョロ!よく見ています。

忌日とて西行桜見に行けり

俳人は忌日も西行も桜も大好き。というより集まるのが好き。

勝馬の騎手の来て居り競馬茶屋

これはいい、調子がいい、縁起がいい。

別荘にまだ誰も来ず蟻地獄

これは面白い。深い意味は無いんでしょうけど、たまたま蟻地獄がそこにあった事を神に感謝したくなる。
多分意味は無いのに、何やら深い意味を感じるところがある句。あぁ面白い。

かまきりの蝶捕へ居る芙蓉かな

これいいんじゃないですか?やわらかな芙蓉の上で静かに自然界の掟が、蟷螂の黄緑が美しい。

何もなし無花果なりと採りてたべ

暇なもので

寒燈やもの思ひつつものを書く

ものもの楽しい

看護婦に歌留多取らせて眺めけり

入院するなら最高な入院生活を送りたい。すなわちこれ、良いね、ナースに歌留多、うん。

たまに来る浪見てゐるや冬の濱

あぁー、たまに来るなぁ

自動車の探梅行や杉田道

みんなで楽しい

どの家も料理屋ばかり梅の村

小さくてあまり綺麗じゃない味のある店がいいなぁ

瀬戸物の人丸置いて人丸忌

気に入りなり

丹念に水打つてゐる書生かな

見所あり、この書生

船の名も花の吉野や浦廻り

あぁ良いですね、俳人大喜び。「廻」の字が生きてきます。

馬下りて鈴蘭を採る奥の牧

可愛いところ、あるよ

月見客昼の中より来てゐたり

こういう人にかぎって月なんか見ない、飲んで食うだけ。

見る限り露の光りやゴルフ場

なんと煌めくゴルフ場

小娘の道案内や秋の山

オカッパだと嬉しい。つげ的な

茸狩に出て茶屋の人皆居らず

みんな、居ない

一門の外に人なし河豚の会

ねぇ、楽しいね、豪勢だねぇ。当時のホトトギスの人達を想像しながら読むと夢がある。おそらく眼鏡は丸い。

嬉しさに田楽を焼く女房かな

女房「今日はいつもより焼いちゃうよ、田楽焼いちゃうよ」

良き女房

山の温泉のホテルの前の盆躍り

好きな句。温泉のホテルと盆躍りは少しショボいぐらいがいい。

丸ビルの屋上園や天の川

ようこそ丸ビルへ

おのおのが柿下げてゐる小駅かな

各駅的な駅ですな、味わいがある

あかあかと秋の夕日やゴルフ場

心にあかあかゴルフ場

少しづつながくなる日やゴルフ場

いつも僕らはゴルフ場(お好きね!)

遠山に残る雪あり桃の花

こういう村の茶店でだんごを食べたい

菊作ることを覚えて老楽し

老いたら菊を作ったり金魚に凝ったりしたい。

風邪の妻饂飩を食べて眠りけり

水竹居さん「あぁ可愛い僕の妻」
↑イメージね

スッポンの道に出てゐる秋出水

あ、スッポン

乾きたる草をつかんで嗅いで見る

ふむ、あ、普通、うそ、ちょっと臭い。なんて発見もまた人生の幸せです。

鰒の会年の順序に座りけり

大事なり

畳替するのせぬのと小いさかい

そのあとでブスッとした顔で熱いお茶を飲む

この寺や前も後ろも梨畑

清々しい、寺。

蟹を書くことを覚えて楽しけれ

うわーい、蟹、蟹、蟹!

若草を踏みてゴルフも久しぶり

やっぱり楽しいゴルフかな

稲妻や畑のものを採りに出る

今ですか!?どうしても今?

避暑の子の眼鏡をかけて賢こさう

眼鏡だけに

雪山も見あきて橇の人を見る

人はなんでも飽きます

金魚玉小さし金魚の窮屈に

気付いたのなら大きいの買おうね

この頃は冷しうどんが常の飯

油っこいのはいけなくてね

落葉焚く煙は白く柔かに

これ良い句!生活の楽しさを知っている人の句です。「柔らかに」に愛がある。

ささやかに植木市立つ花の寺

こういう寺は空気もよくて住職も優しい。

何事も人任せなり菊もまた

あ、自分ではやらないんだ…、それは反則。

寄せ鍋の煮ゆる音きき投句かな

楽しい句会、すなわち美味しい句会

蟹を食べ寄せ鍋を食べ除夜楽し

好きなもの食べました、楽しいです。

尺八も鞄に入れて夏の旅

持っていくんですか!?

老いの腕ポキリと鳴りて蠅を打つ

いい感じです。老いは軽くありたい

山荘へ行つたり来たり秋暑し

世の中に「なんとなく」ほど素晴らしい言葉はない

会ふときが別れぞ秋は一としほに

晩年の句と考えると色々思わせます。細い手でがっちり握手をするのでしょう。

打水やまことしやかに陶の蟹

あぁ出た、好きな蟹です。僕も欲しい陶の蟹。

見て廻る瓜や胡瓜や旅帰り

瓜や胡瓜の好きな人は友達になれるタイプの人です。

遊船の乗り降りの人見てたのし

通は乗り降りを楽しむ

梅の宿笛を忘れて帰りけり

あえて、あえて取りに行かない

風鈴の鳴り通しなる今日も無事

最後に相応しい句ですね、今日も無事、今日も無事と毎日を積み重ねていきたい。

どうですか?虚子じゃありませんが、こういう句をニコニコ楽しめるようになれば人生少し楽しいじゃありませんか。

ゾクゾクする句も良いし、タハハと笑える句も愛したい。

ゾクゾクよりもタハハの句は紹介される事がどうも少ない、今年もそんなタハハの句をどんどん読んでは紹介させていただきたいなぁと思っています。

みなさま今年もどうぞご贔屓に!

さ、新年最初の…

ばーい