「雨」 野口る理

「雨」野口る理

薄紙に雨の匂ひよ秋蛍
長雨や檸檬を包む手の母似
蔦迫る窓辺も雨の景として
秋雨の記憶にひそむ夏のひと
雨月なる湯船にお湯の蒼さかな
肉体に雨宿りする秋の声
やみさうな雨を見てゐる案山子めく