「とまらない春の宵」 野口る理 〈『俳句四季 4月号』より〉

「とまらない春の宵」 野口る理

扉をひらき春風つくりはじめけり
あるきつつ鍵を鳴かせる朧かな
忘れても良し冥闇の夏蜜柑
蝶苦しうすむらさきにりりりりり
それなりに使ふふらここ囲む柵
眼を通り頭の中へさつきの蝶
天に地に彼等に春の水巡れ
しつとりとサンドウィッチよ猫の子よ
めくばせにこぼるる桜さやうなら
扉をとざし春風こはしをへにけり

〈『俳句四季 4月号』(東京四季出版、2016)より再掲〉