「耳鳴り」野口る理

『耳鳴り』野口る理

「耳鳴り」
雨降るか広げて軽き秋扇
切先のじわじわ西瓜たらんとす
姉の服着こなしてゐる案山子かな
敬老の日を真つ直ぐに蛍光灯
藤の実の滴るやうに実りけり
月光を月の匂ひと思ふなり
耳鳴りや霧の向かうにただの空