る理 1周年祭、ということで、『スピカ vol.1』を作った頃のことを振り返りましょうか。
紗希 雑誌の「スピカ」ね。
華子 もともと、ウェブでやろうって決めてたわけじゃなくて、はじめから、紙も出したいねって話だったんだよね。
紗希 そうそう。コストもかからないし、まずはウェブからってことで、準備をして雑誌もだそうね、っていう。
る理 よし、実際に作ろう、って決めてから・・・どれくらいかなあ。
華子 着手しはじめたのは6月くらいだった?
紗希 うん。雑誌づくりっていうと、まずは記事の中身。それから入稿して印刷・製本。最後に発送。どんな雑誌にするかについて、何度か編集会議したよね。ま、編集会議っていっても、カフェとかお互いのおうちでお茶やお酒飲みつつ、って感じでしたが。
る理 特集は「男性俳句」。当初、いろいろ考えましたよね?
華子 もともとは、いろんな方にインタビューして、今しか聞けないことを残しておきたい、っていう気持ちもあった。だから、別枠で特集するかどうかってとこからだったんだけど・・・
紗希 せっかくだから、私たちが話題にして面白いことがいいな、っていうね。まず第一冊目だっていうこともあって。それで、女三人っていう集まりだから、あえてジェンダーにチャレンジしてみよう、と。
る理 そのせいで今、ジェンダー系の人たち、みたいに見られるところもある?(笑)
紗希 かもね(笑)。雑誌って、どうしても読み捨てられていくところがあって、できればそうではなくて、どこかのページだけでも、破って取っておいてもらえるような、そんな雑誌が作りたかった。資料的価値があるような、ね。
華子 卯波で、SSTのみなさんと「男性俳句」というテーマの座談をしました。
る理 そのときに、一緒に、「よみあう」も収録させてもらいました。
華子 結局、ぜんぶで3時間以上の、長い座談会になったね。
紗希 もう少しジェンダー的にも踏み込んだ話にしたいと思っていたのですが、あんまりフェミニズムの論を踏まえ過ぎちゃうと、一般的な人たちが現在抱いている「女性俳句」とか男性・女性という概念に対する認識と、あまりに離れちゃうような気もして。次の機会があれば、男性俳句とか女性俳句という括りに意味がない、という結論からもう一歩先に行きたいですね。
華子 もうひとつの座談会は、女性ばかりの、まさに女子会やったね。
る理 渋谷の天井の低いお店でしたね。秘密の会合感があった。
紗希 座談会では使わなかった部分も多かった。ま、女子会だからね。門外不出の話もいろいろ。
華子 百合系の話とか。
紗希 SSTの座談会では、書かれた俳句作品から見えてくる男性・女性という像をみつめることが目的で、この女性の座談会では、実際に俳句を作ってきた中で、これまで生きてきた中で、女性であることをどう意識してきたか、作家としての意識を聞いてみよう、ということでしたね。
る理 インタビュー企画では、銀座卯波の店主、今田宗男さんに、おばあちゃんである鈴木真砂女さんのことを伺いました。
紗希 る理・紗希は、卯波でアルバイトさせてもらっているので、長いことお世話になっています。華ちゃんも、東京に出てきてから、よく飲みにきてたよね。
華子 うん。だから、真砂女さんの話は、ことあるごとに聞いてた。大切な話もたくさんあるから、せっかくのこの機会にまとめておきたいねって。
る理 なごやかにすすんで、とても楽しかったです。真砂女さんの句帖やお手紙など貴重なものもたくさん見せていただいて。
紗希 また、ほかにもお話うかがいたい方たくさんいらっしゃるので、チャレンジしたい。
る理 そして座談の他にも、私たちが今読みたい方にお願いして、充実した記事を寄せていただきました。
華子 他にも、ウェブの記事を転載することにして。
紗希 さて、記事がそろえば、今度はどのように雑誌の形にすればいいのか、というマテリアルな部分の問題が出てくる。
る理 そこで、雑誌の編集のお仕事をされていたTさんに、本作りについてお話を伺いました。
華子 私たち、本当になにも知らなかったもんねえ。
紗希 そうそう。予算このくらいで、このくらいの雑誌を作りたいんですが、そもそも何からしたらよいのでしょうか?という、本当にイチから質問してしまったのですが、丁寧に答えてくださいました。
る理 まず「その予算で、そのページ数・冊数は無理」ということで。印刷会社の方に、いろいろかけあって聞いてくださったけど「それは頑張っても無理だよ~」と言われたらしく、そこまでしていただいて恐縮です。
華子 予算は、三人の持ち寄りでやろう、ということでね。
紗希 本にする過程で、印刷・製本というのは想像できた。そこで、印刷代・紙代、製本代がかかるとのこと。
る理 製本は、中とじ製本とくるみ製本と。「スピカ」はくるみ製本にしました。
紗希 で、印刷・製本の前に、雑誌の形に記事を整える作業、つまりこのまま印刷してくださいというデータをつくる作業、イコール「組版」がある、と。予算を抑えたいんだったら、この組版の部分を、自分たちで頑張ってやってみたらどうか、とアドバイスをいただきましたね。
る理 インデザインとかフォトショップ、イラストレーターといった編集ソフトを使って、記事をまとめていく作業。
華子 そこで同席していた酒井くんにみんなの視線が集中。「わたし、今日そのつもりで来ました」と、組版にチャレンジすることを宣言してくれた。
紗希 いや、ほんと、酒井さまさまです。彼なしには、一ページもできなかった。
る理 そこで、Tさんからいろいろ伺って、インデザインを使うことにしました。
る理 これは、ある日の編集作業風景です。(笑)
華子 床で、ってねぇ。笑
紗希 それぞれノートパソコンを持ち寄ってね。スピカの3人で、座談会の起こしを記事のかたちにまとめたり、ウェブのテキストのどれを転載するか決めたりしながら、出来上がった記事から酒井くんにデータにまとめてもらって。
る理 インデザインは、定価で買うとカナリ高いので、一か月無料お試し版をダウンロードして作りました。
華子 つまり、一か月以内に、編集作業を全て終わらせたってこと(笑)。
紗希 二冊目を作るときには、買わなきゃいけないか、もしくは今度は私のパソコンにダウンロードしますか(笑)。
る理 この編集作業も大変だったみたいです。そもそも私たちのぼんやりとしたイメージをかたちにするのが大変で。総合誌や結社誌のレイアウトを参考にさせてもらいつつ、頑張りました。
華子 それから、中身だけでなくって、大切なことを忘れてる!表紙が必要だよね。
紗希 そうそう。ここもまた、身うちの力をふんだんに借りまして。
る理 私の妹とその友人がデザインをしてくれるということで、お願いしました。
紗希 これは、イラストレーターで作ってもらったんだったかな。私たち、特にビジョンがなかったから、きっと難しかったと思うけど、おまかせして、ビビッドで見やすい表紙になったね!ありがたい。
る理 一緒に、のちのち発送作業のときに必要になる、スピカのはんこもデザインしてもらいました。
華子 封筒の裏に、いちいち手書きでこちらの住所を書いてたら、大変だものね。
紗希 スタンプや雑誌に使うロゴを決めるのに、少し時間がかかったね。
る理 スタンプは、ネットで購入しました。データ入稿すれば、数日後にスタンプが届くというサービス。4000円くらいだったかな。
紗希 そして、なにより大切なのは、どこに印刷・製本してもらうか。
華子 Tさんには「あんまり安いところにすると、製本が雑で、ページがぱらぱらとれちゃう可能性があるよ」と言われていたので、値段があまり安くても心配と思いながら探してたんだけど・・・
紗希 結局、値段はすごく安かったけど、繁盛してるところなら大丈夫そうだろう、ということで、ネットでいくつか探した中から、「緑陽社」というところに決めました。漫画などの同人誌を作るのが主みたいやったけど、わりとサービスも充実してて。
る理 A5サイズ、500冊(おまけ70冊くれるということで、結果570冊)、84ページ。はじめの予算の3分の2でおさまりました。
紗希 発送費用なんかを考えても、予算内でおさまるだろう、ってことで、電話して、お願いしたんだよね。手元の手帖だと、10月12日に電話してる。ページの順番の並べ替えは印刷のほうでしてもらえるか、表紙はイラストレーター・記事はインデザイン、二つの形式で入稿することは可能かを確認して、どんな紙にするかを決めたいから見本を送ってもらった。
る理 つるつるした表紙よりは、紙の質感のほうがいいかなあとか話し合って。
華子 入稿は、その週末、15~16日にはしたんだっけね。
紗希 手帳には、28日には出来上がった雑誌が届く予定と書いてあるから、たぶん。入稿から仕上がりまでに、二週間あけると、そのぶん安くなるプランだったので。
る理 コミケまでに間に合わせたいから5日後までに、なんてことが多いみたいね。そうすると、もう少し予算がかかったのですが、われわれはそんなに急ぐことではなかったので(笑)。
る理 出来上がったときは嬉しかったなあ。
華子 感動したよね!わたしたちでも、雑誌、つくれるんだって。
紗希 やればできる、だね。本当に。
る理 緑陽社のサービスで、二か所までは発送無料だったので、紗希さんの家とうちに分けて、送ってもらいました。段ボール、どさっと(笑)。
華子 同時に、雑誌を販売する方法についても考えたよね。
紗希 スピカのオンラインショップはすでに用意してあったよね。
る理 来たるべき、スピカ紙版を販売することを、念頭において開設したオンラインショップ、でした。
華子 で、オンラインショップで買っていただいたとき、代金のお支払いをどこにしていただくのか、というのがひとつの問題として浮上。
紗希 そうそう。東京だと、銀行口座に振り込みお願いします、でいいんだけど、地方から東京の銀行に振り込んだりするとき、手数料がかなりかかっちゃうんだよね。郵便局だと、全国津々浦々にあるから、一律の手数料で済む。
る理 それに、ゆうちょの口座だと、名義が個人名じゃなくてもいいんですよね。「スピカ」で口座を開設してくれる。
紗希 だから、やっぱり、郵便局にしよう、という話になった。古本なんか買うと、よく郵便局の「払込取扱票」って同封されてるよね。あれを同封して、郵便振替で入金してもらえるように、スピカの口座をゆうちょに作ることにしました。
紗希 手続きしたんは、新宿の郵便局やったねえ。たまたま、紗希&る理が新宿近辺で用事があったので、早めに待ち合わせたのでした。
る理 案外、すぐに済みましたね。30分くらい?窓口の方に教えてもらいながら、必要事項に記入して。
紗希 当日、すぐは払込票を作れない、ということで、開設した口座の記号・番号を教えてもらって、その日は帰ったんだったね。
る理 申し込みをしてから二週間ほどで、払込票が届きました。
紗希 これが届くまでは、郵便局にある払込票に、手書きで口座の記号・番号を書き込んで、同封してたね。
華子 そういえば、「よみあう」に参加してもらった越智友亮くんに、記入を手伝ってもらいました(笑)。
紗希 越智くん、ありがとう(笑)。
る理 発送作業は、11月1日でしたね。
紗希 わたしの家に来てもらって。昼からる理ちゃんと二人で作業していて、華ちゃんは、仕事終わりで参加。
る理 発送に使う封筒をはじめとした細々とした事務用品は、業務用品通販「カウネット」を使って注文しました。
紗希 その封筒の裏に、デザインして注文していたスタンプを、まずは押していく作業。
る理 そのあと、あて名書き。注文分と、雑誌の記事にかかわってくださった方、雑誌に俳句を取り上げさせてもらった方、それから謹呈分。全部で100冊くらいでしたか。
紗希 送るときには「スピカという雑誌を出しました」というような内容の紙も一枚いれたね。どんなことを目指してるのか、手に取ってもらえたら嬉しいという挨拶も含めて。
華子 どんな本か、まずめくってもらえるように、自己紹介をね。
る理 そこからは、封入作業。封筒にいれて、ガムテープでとめて。
紗希 発送は、クロネコメール便にしました。全国一律の金額で、郵便よりも安いこと。荷物の追跡ができるので、紛失が少ないだろうということ。近くのコンビニから、いつでも送れること。
華子 深夜のコンビニに行ったね。60通くらい提げて(笑)。
紗希 ちょうどお客さんが少ない時間帯だったので、ゆっくり作業できました。私、メール便にはすごく詳しくなったよ。よく分からないっていう感じの店員さんには、教えられるくらい(笑)。
る理 スピカのオンラインショップとは別に、銀座の卯波にも置かせていただいています。
紗希 宗男さんのおかげで、卯波でもたくさんの方に買って読んでいただけました。
華子 いまだに、オンラインショップでも、注文があって。
る理 俳コレや句集など、他の書籍のついでに注文してくださる。
華子 ぜひ二冊目を、と思っていますが、まだまだこれから企画、って感じだね。
紗希 今回は、雑誌の形式だったけど、本のような読みものを作ってもいいわけだよね。今度は、そういうものにしてみたい、という気はある。
る理 出版社に近づいていきますね(笑)。
華子 「スピカ出版」(笑)。
紗希 では、これから考えますか!
(終)